Geniusのお勧めをたどるうちに、iTunes Storeで稲垣潤一と太田裕美の「木綿のハンカチーフ」に遭遇。
おぉ、…なかなか!明るくて幸せな曲になっているではありませんか。即購入。気に入っている。
なにせ、太田裕美といえば2年半ほど前、Amazon.co.jpで見かけた「情けない女の歌」、「ストーカー女の歌」というカスタマーレビューが強烈!…苦笑、でもって同意。
「そうだなぁ、『木綿のハンカチーフ』なんかダメ女の歌だなぁ。人がよすぎる。そういう意味じゃ、さらばシベリア鉄道つながりで、大瀧詠一の『恋するカレン』はダメ男の歌だなぁ。」
などなどと思いつつ、当時、ベストアルバムのCDを注文したのでした。
# ちなみに、このアマゾンのレビュアーは太田裕美のファンだと思う。
稲垣潤一とのデュエットは、詞は変わらないのに、切々とした感じがさっぱり抜けている。なるほど、こういう大人のなり方もあるのかぁ、という感想。
「木綿のハンカチーフ」といえば、en-Rayがサントリー烏龍茶CMで歌った、肩の力が抜けた感じも良かった。いきものがかりの前を向いて突っ走る感じも良かった。
でも、稲垣潤一と太田裕美の「木綿のハンカチーフ」の新鮮さは、どこかひと味違う。セルフカバーなのに?セルフカバーゆえか?
これは、なんだろう?探ってみることに。
# この記事はながいぞ(^_^;)
Boots of Spanish Leather
始めて知ったのだけれど、日本語版ウィキペディアやブログを見ると、「木綿のハンカチーフ」の詞は、Bob Dylanの「Boots of Spanish Leather(スペイン革のブーツ)」に似ていると。
確かに、似た部分はある。なるほど、言いたいことは分かる。
でも、やっぱり、どこか違う詞だと感じる。
どう違うんだろ?それぞれ曲のタイトルが出てくる、最後の部分が…決定的に違うような…。ちなみに、役どころが男女逆なんですね。
木綿のハンカチーフ | Boots of Spanish Leather | |
---|---|---|
去る男 ぼくは帰れない |
別れのことば |
去る女 I don't know when I'll be comin' back again, 残される男 I'm sure your heart is not with me |
女 涙拭く木綿のハンカチーフください |
欲しいもの |
男 there's something you can send back to me, |
「Boots of Spanish Leather」は大人というか、屈折してるというか、奥ゆかしいというか、皮肉というか…。
彼女は、はっきり言わないのね。それと、スペイン革って、本場物というニュアンスなのかしら?
これ、交換して歌ったら、どちらも《らしくない》んじゃないかな…。あるいは「木綿のハンカチーフ」と「Spanish boots of Spanish leather」を交換したら、それぞれ違う詞になってしまう気がします。
Blackjack Davey
興味深いのは、英語版Wikipediaの「Boots of Spanish Leather」の項に、にこんな記述が: ある人の指摘で、この最後の部分は、古いフォークソングのBlackjack Daveyと、とっても似ている。どちらもスペイン革の履き物が重要な役割を果たしている、と。
おやまぁ。それはそれは、見てみなければ。
Wikipediaによると、「Black Jack Davey」は1720年頃に書かれた、古いイギリスのフォークソング。「The Gypsy Laddie」や「The Raggle Taggle Gypsies」などさまざまタイトルで知られ、内容にも大きく3パターンあるそうな。
Bob Dylanも「Blackjack Davey」というタイトルで歌っているので、それを聴いてみる。
なるほど、似ている。というか「木綿のハンカチーフ」も含めて、3曲似ている。というか、この「緑の草原 v.s. 愉快な都会」みたいなモチーフはよく使われている。290年間変わらないのですね。
緑の草原 | 愉快な都会 | |
---|---|---|
欲しいものはない 都会の絵の具に染まらないで帰って | 木綿のハンカチーフ | 君への贈りもの |
あなたのキス |
都会で流行の指輪 星のダイヤ、海に眠る真珠 | |
素顔 草にねころぶ |
口紅 見間違うようなスーツ | |
木綿のハンカチーフ |
||
there's nothin' you can send me Just carry yourself back to me unspoiled | Boots of Spanish Leather | Is there something I can send you |
your sweet kiss |
something fine Made of silver or of golden, the stars from the darkest night And the diamonds from the deepest ocean | |
Spanish boots of Spanish leather | ||
grass grows green | Blackjack Davey | money |
Got behind him on his horse |
high-heeled shoes all made of Spanish leather | |
long blue gloves all made of the finest leather | ||
love of Black Jack Davey |
house and home, baby, husband | |
In the arms of Black Jack Davey |
in a feather bed between husband and baby |
こうしてみると、やはり、「木綿のハンカチーフ」と「Boots of Spanish Leather」は、肝心なところで微妙に違う気がします。
# こういうのもセイムスケールですね…この話は、またいつか。
木綿のハンカチーフ年表
これは、根拠とか、結論とかいう話ではありませんが…
探ってみて、稲垣潤一と太田裕美の「木綿のハンカチーフ」に感じた新鮮さが、少し分かった気がします。
彼が「ぼくは帰れない」と率直に言い、彼女が「木綿のハンカチーフをください」と言ったから、30年後に、こんな風に幸せに歌えるのでは?であれば、セルフカバーでこその新鮮さなのかも。
そしたら、YouTubeに、太田裕美がインタビューでこう言ってるビデオが:
…にこにこして歌う歌ではないんですけど、客席の皆さんがすごくうれしそうに、幸せそうな顔して聴いてくださったり、口ずさんでくれてて、すごく幸せな気持ちになれるんですよ、…
なるほどー…種明かしのようなビデオだ。
であれば、2008年版の「木綿のハンカチーフ」は、松本隆と筒美京平と太田裕美とファンとの30年と稲垣潤一との共作ですね。
「Blackjack Davey」の数年後、Black Jack Davey(ぼく)が都会へ去ってしまったのが1975年版の「木綿のハンカチーフ」、30年後に再会した2人が歌うのが2008年版の「木綿のハンカチーフ」ってのは…どう?
…ということで↓ (^^ゞ
- 「木綿のハンカチーフ」年表
- cotton-handkerchief-v1-20090125.ics