リフィル制作者の一人、koudadさんが、「…有機的で不可解なことにより予定と違う結果になることが往々にしてあります。曖昧でどっち付かずな情報や、複合的な関係の中のバランスを見ながら調整したい…」というフリーマッピングの「仮説2」を紹介してました。大切な仮説だと思います。
ちょっと前に、雑誌にこんな記事が載りました。
…でも、日本のビジネス書と、アメリカのビジネス書には大きな違いが二つあって、一つは不確実性に対する態度。日本の脳に関するビジネス書は、正解が決まったことをいかに効率よくやるかということをテーマにしているものが多い。ところが、アメリカの脳に関するビジネス書は、不確実な状況で脳がいかに選択し、判断しているか、つまり選択力、判断力を鍛えるというテーマが多い。アメリカ人は不確実な状況に向き合うのが好きだが、日本人は不確実性を嫌う。これが一つ目の違い。
もう一つの違いは、日本のビジネス書はノウハウ的なテーマに流されがちだが、アメリカのビジネス書では人間形成をテーマにしたものが多い。これは非常に大きな文化の差だ。
茂木健一郎「脳の仕組みを利用すれば仕事も勉強も思いのまま」
週刊東洋経済、2009/1/17
あいまいさ、不確実性、矛盾へ対処するスキル
茂木さんの記事で思い出したのが、2004年12月の日本版ニューズウィークの「キャリア偏差値の磨き方」という記事です。
国際企業100社のCEOがMBA取得者に求める能力
The New Global Business Capabilities
知識
Knowledge | スキル
Skills | 性格
Attributes |
国際マクロ経済学
Global macroeconomics |
多様な文化への対応
Managing diverse cultures |
揺るぎない誠実さ
Unyielding integrity |
国際金融
Global finance |
あいまいさ、不確実性、矛盾への対処
Dealing with ambiguity, uncertainty, and paradox |
広い世界に対する意識
Worldly awareness |
グローバル戦略
Global strategy |
意志決定
Decision making |
変化を活力にする
Thrive on change |
組織構造と組織力学
Organization structure and dynamics |
説明責任
Accountability |
判断力と洞察力
Judgement and intuition |
競争市場のミクロ経済学
Competitive microeconomics |
部下の成果を引き出す能力
Managing performance |
質の高さを追求する
Demanding excellence |
意志決定の科学
Decision science |
プロジェクトマネジメント
Project management |
忍耐、粘り強さ
Perseverance and tenacity |
国際マーケティングとブランドマネジメント
Global marketing and brand management |
複雑な物事を簡潔にする能力
Ability to make the complex simple |
適応力、感応性
Adaptability and responsiveness |
販売と顧客口座の管理
Sales and account management |
プレゼンテーション能力
Presentation skills |
熱意と説得力
Passionate and persuasive |
技術経営
Technology management |
話を聴く力と観察力
Listening and observation |
好奇心と独創性
Curiosity and creativity |
会計学
Accounting |
人脈づくりと共同作業
Networking and collaboration |
自己認識
Self-awareness |
人事管理
Human resource management |
チームづくりとチームワーク
Teambuilding and teamwork |
他人を関与させることに対する自信
Self-confidence to involve others |
コーポレート・ガバナンス(企業統治)
Corporate governance |
能力の評価
Talent assessment |
人をやる気にさせるエネルギー
Boundless energy to motivate and energize |
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対人能力とフィードバックする能力
Interpersonal skills/giving feedback |
部下の実績評価
Judging performance |
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|
向上心と学ぶ能力、吸収力がある
Capacity and desire to learn; coachable |
日本語部分: 「キャリア偏差値の磨き方」
ニューズウィーク日本版、2004年12月8日号
英語部分: 「The Upwardly Global MBA」
by Nigel Andrews and Laura D’Andrea Tyson
strategy+business、2004年秋
ニューズウィークの記事は、strategy+business誌の「The Upwardly Global MBA」という2004年の記事を引用しています。ざっと紹介しますと…
2003年にLondon Business Schoolが調査を実施し、20を超える国の100を超える国際企業の経営者にface-to-faceでインタビューした。最もよく引き合いに出された39の能力を、"Knowledge"、"Skills"、"Attributes"の3つのカテゴリーに分類したのが上の表だ、とのこと。
つまり、調査の結果、顧客(=国際企業の経営者)は製品(=卒業生)に対して、不確実性に対処するスキルを求めているので、ビジネススクールとしては、そのスキルを学生に訓練する必要がある、と。
ただし、記事自体は、そのほとんどの部分で、ビジネススクールが顧客のニーズに応えるためにとるべき変化について述べています。逆に、例えば、上の表に上げられている「あいまいさ、不確実性、矛盾」へ対処するスキルとはどのようなものかについては、何も書かれていません。
さて、アメリカの出版社が同様に考えたとすれば、茂木さんの記事と符合します。…う~ん、確かに「正解が決まったことを効率よくやる」スキルへの期待は、あまり大きくないようです。
あいまいさ、不確実性、矛盾への対処を助ける道具
2004年当時、この記事を読んで思いました。コンピューターソフトウェアは道具であり、人が技能を発揮するときに、それを助けるものだ。なので、道具屋としては、表の"Skills"カテゴリー列に着目したい。では、人が「あいまいさ、不確実性、矛盾へ対処」し、「意志決定」して「複雑な物事を簡潔に」し、「説明責任」を果たすとき、役に立つソフトウェアはどんなものだろう?
でもって、xfy Plannerにもこのテイストを持ち込みたい、と。そうやって、リフィルデザインに没頭すると…………
……………ブログ更新が途切れるんですね(^^ゞ